今日ここでこの車両のカスタムの話をご紹介できることは、本当に奇跡としか言いようのないとても稀有な出来事です。
はじめにこちらの車両のオーナー様からお問い合わせを頂いたのは2009年の11月のことでした。
Ducati748SPを所有されていて、それまでEPロムの変更等で調整してこられたそうですが、どうにも納得がいかずコンピューターそのものを交換検討中ですというお問い合わせでした。
その後、何度かメールでやり取りさせていただき、マイクロテックのECUを導入していただけることになりました。
2010年3月には、手始めにラムダセンサーを取り付けて頂くようにセンサーをお送りしたり、実車をレイクラフトのワークショップまで送っていただく準備をしていただいたりと、少しずつではありましたがカスタムの段取りを進めていました。
実は、オーナー様は沖縄の方で、748SPは2010年の5月にはるばる沖縄から海を渡り厚木に到着しました。(ちょっと大げさ???)
しかし、5月といえば、すでにレースシーズンに突入しており全日本ロードレースのサポートで転戦する私たちとしては、じっくり時間を掛けて丹念にカスタムを進めたいと思っていた748SPには、ちょっと待っていてもらうしかありませんでした。
2010年のシーズンも終わった11月から、いよいよ本格的に748SPに取り掛かりました。
スタンダードのECUからベースマップを取り、ハーネスを製作し、専用のマップを作成しあとは実車への取り付けです。
2011年1月末から2月にかけて、今回もいつものように仙台のフクダテクニカさんへ車両を持ち込み、ECUのステイ製作やスピードセンサーの取り付け、シフター用の専用シフトレバーの取り付けなど、ECUを導入するのに必要な様々な作業をお願いしました。 そしてもちろんシャシー台上でのECUのセットアップについてもいつものようにご協力頂きました。
考えてみると、これまではテスタストレッタのエンジンセットは何台かやってきましたが、デスモクワトロは今回がはじめて。
Ducatiの往年の名機デスモクワトロもECUを最新のものにすることで、また新たな息吹を吹き込むことができるとすればデスモクワトロユーザーの皆さんには朗報となるはず。 チャレンジングな気持ちが湧いてきます。
マイクロテックのECUには、ノーマルのECUを置き換えるだけのいわゆる”プラグイン”のタイプが各種ありますが、さすがにデスモクワトロ系のECUのプラグインはありません。
こちらが、748SPのノーマルECUである 16M。
で、今回の手法は、ノーマルハーネスのECUコネクタに合うようにアダプタを製作し、そのアダプタにマイクロテックのM180という汎用ECUを取り付けました。
そのアダプタがこちら。 ですので、ノーマルのハーネスは一切、切った貼ったしていません。(すごーい!)
これが、今回フクダテクニカさんで製作していただいた、ECUとラムダアンプを取り付けるステイ。 ん~COOL!!!
黒いほうがECU本体で、ステイのプレートに半分沈み込むような感じでとてもきれいな収まりです。 液晶のディスプレイの付いた黄色いほうがマイクロテックの2チャンネルラムダアンプ。 ツインのエンジンはやっぱりラムダは2系統採りたいです。
こちらは、デジテックの”FALCON”ダッシュ。 以前はワールドスーパーバイクでDucatiワークスも使用していた逸品です。
CAN入力だから配線もシンプルですっきり。ダッシュのステイはオーナー作のカーボン製。
そして、こちらはリヤのスピードセンサー。 車速表示用途だけでなく、車速によるラム圧補正、ギアの認識など今やスピードを正確に計測することは大前提の必須項目です。
最後に、こちらは以前コラムでもご紹介したシフター用のスイッチ付きシフトレバー。 レーサーシフト(レバーを踏んでシフトアップ)専用ですが、作動は確実です。
次は、いよいよシャシー台に載せてセットアップ。 準備してきたベースマップを元に何度かセット替えをしながらセッティング。
山、谷のないスムーズなパワーカーブで、なかなかの出力となりました。 始動性も文句なしです。
後は納車を待つばかり。