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ネコラム2013年1月19日

シフターのオススメはこれ! Starlane パワーシフト

こちらのコラムで何度かご紹介しているので、ご存知の方や実際にもう使われている方も多いかと思いますが、くどいようですが懲りずに、またご紹介したいと思います。

それは、Starlane(スターレーン)のパワーシフト!

Starlane Power Shift

2013年シーズンから、全日本ロードレース選手権のST600クラスでも正式にシフターの使用が認められ、何かいいシフターはないかとお探しの方も多いのではないかと思いますが、そんなアナタにはこれ!是非オススメします。

<オススメ理由 その1> 取り付けが簡単

パワーシフトは基本的には汎用部品ですので、車種を選ばずどんな車両にも取り付けが可能ですが、シフターのインプットの付いた各メーカーのキットECUを装着している場合には、専用の端子を接続するだけでOKです。

国産4メーカーのノーマルECUを装着している場合で、スティックコイル(フルトラ点火用)を使用しているタイプの4気筒車種については、対応するアタッチメント (いわゆる”ポン付け”キット) が設定されています。 これを使えば、面倒な配線の切り貼りなしで、パワーシフトを簡単に取付けできるのです。

<オススメ理由 その2> 微調整が簡単

シフターを使うとき意外に手こずるのが、失火の時間や、センサー荷重の設定です。 この設定がうまく出来るか出来ないかで、シフターのフィーリングは雲泥の差になります。

パワーシフトでは、失火の時間を30msecから150msecの間で10msec毎に自由に設定することが出来ます。また、失火のタイミングを決めるセンサー荷重の設定はセレクタースイッチで16段階に調整することが出来るのです。

さらに、このような微調整は、パソコンなどをつなぐ必要なく、ユニット本体のボタンとロータリースイッチだけで設定変更できます。

<オススメ理由 その3> わかりやすい日本語マニュアル付き

図解入りのくわしい日本語マニュアルが付いていますので、電気モノがちょっと苦手と思っていらっしゃる方でも、安心して取り付けできます。

もし、分からないことがあれば、レイクラフトにお問い合わせいただければ詳しくサポートいたします。

全日本ロードレース選手権ではフィールドサービスも行っていますので、現場での対応も安心です。

<オススメ理由 その4> 高い信頼性と耐久性

そして何より重要なのが、リアルレーシングに要求される高い信頼性と耐久性です。

パワーシフトはワールドスーパーバイクからのフィードバックを元に開発され、現在はモトGPでMoto2クラス、Moto3クラスに参戦しているGresini Racingとパートナーシップを結んでいます。

また、鈴鹿の8耐に参戦したチームでもトラブル無く使用されその耐久性を実証しています。

気になる価格は?・・・

・ パワーシフト本体価格 ¥59,800(税別)

・アダプタ・キット (ホンダ用/ヤマハ・カワサキ用) 各¥10,000(税別)

・パワーシフト スズキ GSX-R用 ¥69,800(税別) アダプタ・キット付き

(EM-Pro装着車は除く。EM-Proを装着されている方は標準のユニットをご指定ください。)

パワーシフトの詳しい製品説明はこちらから ↓  http://www.raycraft.jp/products/products_index.html#starlane

パワーシフトに関するお問い合わせは下記取扱店またはレイクラフトへ直接お問い合わせください。レイクラフトではメールオーダー通販も行っております。

≫  レイクラフト

  • 直販  TEL: 046-225-6284
  • メール通販 メールアドレス⇒ mail@raycraft.jp
  • メールオーダーの場合は上記アドレスに、ご連絡先と、取り付ける車種、年式をご連絡ください。折り返し適合製品とお見積をお送りいたします。

≫  ディライト    三重県鈴鹿市

  • TEL: 059-370-3528
  • HPアドレス⇒  http://www.delight-suzuka.co.jp/
  • DUCATI車種別キットを販売しています。

≫  フクダテクニカ 宮城県仙台市

  • TEL: 022-349-8770
  • HPアドレス⇒  http://www.fukuda-tec.com/
  • 国産車、輸入車問わず対応。適合は直接お問い合わせください。

≫  K0エレクトロニクス    徳島県美馬市

  • メールアドレス⇒ kasai@tamtec.co.jp
  • 関西、中・四国地区の皆様はどうぞこちらへお問い合わせください。

≫  アラタカデザイン    福岡県三井郡大刀洗町

  • TEL: 0942-77-5730
  • メールアドレス⇒  aratakadesign@yahoo.co.jp
  • 九州地区の皆様はどうぞこちらへお問い合わせください。

追伸: 最近、並行輸入のパワーシフトが出回っております。 レイクラフトおよび上記取扱店でお買い上げのパワーシフトは取付に関するご相談や、不具合時の対処も責任を持って対応しております。 保証の無い並行品にはくれぐれもご注意ください。

ECU2013年1月13日

もっと簡単に M270R-GP3

レイクラフトではM270R-GP3(ECU)をMFJ公認部品として公認を受けました。(2013 1/25 より使用可能) 一般的にはM232-GP3のような汎用ECUはハーネスを新規で製作するためECU自体のコネクタはあまり大きな問題にはなりません。また実際NSF250Rのハーネスはものすごく重量があります。ここで新規作製のハーネスにある程度の金額をかければ重量は1/2~1/3に軽減することは十分可能です。

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しかしながら汎用ECUが一般化していない日本ではハーネスを新規に製作することが汎用ECUに交換する際の大きなハードルになっているという事実があります。また現状ではいかに低コストでレースを行うかが大きなテーマになっていることも事実です。そこでレイクラフトではNSF250RのプラグインECUバージョンのM270R-GP3を設定しましたのでここで詳しく説明してみたいと思います。

特徴はまずSTD ECUと交換するだけの手軽さという点です。しかしながらここで注意していただきたいのはこのECUはMarelliやMOTECと同じフルコンであるということです。このフルコンの難しさを少しでも払拭するためにレイクラフトではM232-GP3と同様に発送時にNSF250RのベースマップをECUにプリセットするサービスも行う予定です。

このECUの特徴は基本的なセッティングから高度なセッティングまで直感的に分かり易い画面で行える点が挙げられます。またひとつひとつの機能がレースに使用することを前提に考えられています。例えばギアシフトに関してもオートシフターの失火時間とシフトドラムの回転角が関連付られており単純なタイムベース制御ではなくクローズドループ制御が可能であり自動的にオートシフターの失火時間が決定されます。当然ながらこの制御を行う場合はセレクタ式のギアポジションセンサーではなくポテンショメーター式のギアポジションセンサーが必要となります。この機能はファクトリーレベルでは当然行われている制御ではありますが一般的なレーシングECUでは珍しい機能です。同様にエンジンブレーキコントロールに関してもバイパスエア量を単純にエンジン回転数とスロットル開度のみで決定する機能に加え、エンジン回転数/スロットル開度/ギアとスキッド(減速時に発生するリアタイヤのハーフロック)レベルを考慮したバイパスエア量のコントロールをすることも可能です。この機能も一般的なレーシングECUにはない機能です。

最後にレイクラフト的にはマイクロテックの最大の特徴と位置づけをしている学習機能付きA/Fフィードバック制御についての有効性について解説してみたいと思います。マイクロテックの学習機能付きA/Fフィードバック制御は非常に短時間でターゲットA/Fにするための燃料セットを自動的に行うことが出来ます。例えばサーキットで同じ場所を同じようなエンジン回転数、スロットル開度で毎回通過する場合、普通のA/Fフィードバック制御では毎回同じ様に補正係数が決定されます。この場合もしベースマップがターゲットA/Fに対してかなりリッチな燃料セットでターゲットA/F=12.8に対して毎回A/F=12.2までしか調整出来ないとした場合、これを解決するにはA/Fフィードバック制御のセッティング変更かベースマップ調整が必要となります。しかしマイクロテックの学習機能付きA/Fフィードバック制御は走行時の最終補正値を記憶しているため、もう一度同じ場所を同じような条件で通過すれば前回通過時に補正された値をベースに追加補正されるため補正回数を重ねるたびに実A/FとターゲットA/Fが近づきかつ一回一回の補正値が小さくなり最終的には制御範囲全域をターゲットA/Fでトレースすることが可能となります。またこの状態までくれば、学習機能付きA/Fフィードバック制御をキャンセルして最終学習値だけで走行しても同じような結果を得ることが可能となります。また吸排気系の変更等で今までの学習値が使用できなくなった場合はオンライン状態で学習値リセットボタンをクリックすればまた一から学習値を保存する事が可能となります。このオートマッピングこそ走行時間が少なく人手が足りないプライベートチームには絶対必要な機能であると考えます。

今回説明した内容はM270R-GP3の特徴の一部分ですがレースをする上で大きな可能性をもつレーシングECUであることを理解していただけたのではないでしょうか。また次のコラムではM270R-GP3のもう一つの特徴であるCANによるデータストリームを利用したデータロギングの方法を解説したいと思っております。

ECU2012年12月6日

M232-GP3と全日本最終戦

今年レイクラフトではMicrotecのM232-GP3をMFJの公認ECUとしての認可申請を行い許可されました。

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このM232-GP3は全日本最終戦で山本剛大選手と山田誓己選手が使用しました。結果はご存知のようにレースは大雨でキャンセルとなり予選までの走行となりました。

しかしながらM232-GP3使用のユーザーが予選とはいえ、ECUセッティングに多くの工数をかけられない状況で、山本剛大選手が4位 山田誓己選手がポールポジションという結果は大変有意義な結果であると考えます。

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ここではM232-GP3のレースで使用する場合、他のECUとは違う具体的なメリットについて説明することにします。

例えば吸排気系を大きく変更した場合を考えるとまずは燃料セットを最適化するところから始まります。このような場合M232-GP3は学習機能つきA/FフィードバックコントロールというファンクションをONにすれば実際の走行時のA/Fをエンジン回転数やスロットル開度ごとに設定したターゲットA/Fに非常に短時間で正確に合わせる事が超簡単です。このファンクションはMarelliやMotecの上級モデルと比較しても全く遜色がありません。

例えば吸排気系を大きく変更した場合、この機能をONにした状態でサーキットをレーシングスピードで3周ほどすればほとんどの場合実A/FがターゲットA/Fの±0.15程度の範囲に収まります。実際はスロットル開度15~20%以上をA/Fフィードバックゾーンに指定しておいてスロットル全閉~15%程度までの領域はスロットル開けはじめのキャブレーションやエンジンブレーキ特性のセットを各ユーザーが行う領域でありラップタイムにも大きく影響する領域でもあります。逆に言えばスロットル開度20%以上の通常の燃料セットに時間を費やすほどレースウイークはひまではないのです。

またM232-GP3の学習機能つきA/Fフィードバック機能は最終の補正値をECU内部にメモリーしているためA/F計測システムを外してもECU内部にメモリーされた最終補正値を使用してバーチャルA/Fフィードバックで運転することが可能です。またこの学習機能つきA/Fフィードバックを行うために必要なA/F計測システムは特別専用品ではなくCAN出力付きまたはアナログ出力付きのA/F計測システムであれば基本的には可能です。

ここで前出したエンジンブレーキに関してM232-GP3はどのようなことが出来るか説明します。M232-GP3はNSF250RのスロットルボディについているStepper Motor タイプのバイパスエアバルブを直接コントロールすることでエンジンブレーキコントロールを行っており、この方式はNSF250R STD ECUと同じです。

しかしながらSTD ECUと異なるところはM232-GP3はエンジンブレーキのコントロールセットをギア段毎に設定出来ることとエンジンブレーキの強弱を細かく設定できることが大きな違いです。NSF250Rのエンジンブレーキコントロールセットは6000rpm以下の調節と8000rpm以上の調節のみ行うことが可能で、多くのユーザーは8000rpm~13000rpm程度の領域にセッティングの葛藤があるのではないでしょうか。具体的には8000rpmでエンンブレーキをより強くしたセットにすると13000rpm前後のダウンシフト時の使用領域では素早いギアチェンジでリアタイヤが大きくロックする傾向になります。またこの逆で13000rpm前後のダウンシフト時の使用領域に合うようにエンジンブレーキをセットすると8000rpm付近のターンイン時のエンジン回転数領域でエンジンブレーキが弱く逆に車体を押してしまい旋回させずらい状況のになる傾向が強くなるのではないでしょうか。この点M232-GP3はエンジン回転数ブレークポイントが32箇所設定することが可能なのでよりきめ細かなエンジンブレーキの設定が可能です。

次にGP3カテゴリーにはあまりなじみが少ないトラクションコントロールに関してGP3カテゴリーでも大いに有効であるという話しをしたいと思います。まずここで断っておかなければならないのはレース用トラクションコントロールとはストリートバイクのトラクションコントロールとは異なり基本的にトルクリダクションをライダーに明らかに認識されるようなシステムではありません。実際、一昔前の失火を多用していたトラクションコントロールは少数派となりDBWによる吸気量コントロールやA/Fコントロール、IG/Tコントロールによるトルクリダクションが多くみうけられるようになてきています。ここからはレイクラフトの私的な思想を多分に含んだ話でですが時間つぶしに考えてみて下さい。

まずGP3カテゴリーのロガーデータを見て思うことはコーナー立ち上がり時のバンクアングルとスロットル開度の関係です。バンクアングルの最大値はどのカテゴリーも同じようなものですがGP3の場合JSB / GP2 / ST600 では考えられない深いバンクアングル時からスロットルが100%になっている点です。この事実は何を言っているかと言えば、もし車体全体のトラクションが破綻した場合、ライダーがスロットルを少し戻した位では駆動力はほとんど減少しないということです。現実的にも全日本GP3/WGP MOTO3カテゴリーのトップクラスのライダーたちの立ち上がり時ハイサイドは非常にハイスピードであり、多くの場合ライダーが対処出来ないぐらい素早い現象です。

これらの現象の原因の一旦にハイグリップタイヤと大口径スロットルボアが考えられます。しかしながらこれらアイテムをリストリクトしてしまうのはあまりにも後ろ向きでありレース自体の醍醐味までリストリクトしてしまう可能性をはらんでおり規制することには反対です。本来であればDBWシステムがこの問題の多くを解決するのではありますが現実的にはDBWは使用できません。

ここで視点を変えて急激なグリップアウトをトラクションコントロールで緩和できないかという発想です。ここで問題となるのはGP3の場合、スロットル開度からはバンクアングルを予想しずらい点です。しかしながら現在は非常に安価ではあるが高性能なイナーシャルプラットフォームを入手することが可能となってきています。このようなイナーシャルプラットフォームを用いたコントロールはレース界ではMOTOGPやSBKだけのものでした。しかし今では誰でもが買えるようになって来ました。当然のことながらM232-GP3にイナーシャルプラットフォームを組み合わせてトラクションコントロールの有効活用することも可能です。またM232-GP3に標準装備されているトラクションコントロールはリアタイヤがスピンする時のエンジン回転数の上昇する速さを感知して出力制御するタイプのトラクションコントロールです。またこのタイプのトラクションコントロールは使用に際して非常に維持管理が楽なタイプです。

なぜならばスリップ感知タイプのトラクションコントロールは走行中に前後どちらかまたは両方の車速計測系に不具合があればそこでトラクションコントロールはキャンセルされてしまいます。この点M232-GP3に標準装備されているトラクションコントロールはエンジン回転数の上昇率をECU自体が常に把握しており、外付けのセンサーは不要なため故障は皆無です。また制御の内容も点火アドバンス・リタードおよび燃料のリーン・リッチ・カットの組み合わせで少しのトルクリダクションから大きなトルクリダクションまで設定することが可能であり実際のトルクリダクションまでの反応時間も十分高速です。また走行中にライダーによるトラクションコントロールのレベル変更も可能でありプライベートユーザーには非常に現実的で有効に使用できるトラクションコントロールではないでしょうか。

いずれにせよMicrotecのM232-GP3はこれからレース用ECUでいろいろなことをしたいと考えているチームやライダーには最適な商品です。取り扱いも非常に簡単でありかつ本格的なレース用ファンクションの一杯つまったECUです。

このECUは将来のWGPライダーを目指すライダーだけではなく将来WGP・SBKでエレクトロニクスプロスタッフやプロメカニックを目指している若者にも使ってほしいECUです。またM232ーGP3を使い込んでいく過程でいろいろなことをインスパイアされてほしい。もちろん野望をもつお父さんメカニックもウエルカムであることはいうまでもありません。

ネコラム2012年10月4日

天高く、M232‐GP3快走@岡山 <スペック編>

こちらのコラムでは、マイクロテックのECU M232-GP3の仕様について詳しくご紹介したいと思います。 今回は思いっきり字だらけですので覚悟して読んでください。

 

M232-GP3の主な特徴は3つあります。

一つ目は、きめ細かなエンジンブレーキコントロールが出来ることです。

エンジンブレーキのコントロールはこの車種に限らず4サイクル車両の永遠で最大の命題です。 ここがライダーの納得するフィーリングにセットできるか否かがラップタイムを決める重要な要素のひとつになると言っても過言ではないと思います。 

その一方で、エンジンブレーキコントロールのセットは、ライダーの乗り方や好みに大きく依存する、絶対的な答えのない大変難しいセッティング項目でもあります。 

具体的には、M232-GP3では、NSF250Rの純正スロットルボディに付いているエンジンブレーキコントロール用のエアバイパスバルブ(ステッパーモータータイプ)を以下のようにコントロールすることが出来ます。

1)エンジン回転数毎 2)ギア段毎 3)減速中のスキッド(リヤタイヤのハーフロック)のレベル毎といった複数の基本的なパラメータを組み合わせでセッティングすることが可能です。

またM232-GP3は2つの全く異なるマップを持つことが出来るので通常のエンジンブレーキセットをMAP1にセットし,タイヤが消耗した後に有効なエンジンブレーキセットMAP2に設定することも可能です。実際今回のテストでもストレート部の減速セットは同じで、ターンインからクリップにかけての部分ので異なるセットをした2つのマップを使い分けるというテストも行いました。

とは言っても今お話ししたセットはチームもライダーも高いスキルを持たなければセットできないことも事実です。しかしM232-GP3は単にアイドリング回転数を高く設定するだけのセットも当然のことながら可能なのでその状態でテストをはじめて、エンジンブレーキの過不足を回転数といった切り口で体感すればおのずと乗りやすいエンジンブレーキのセットが見つかるはずです。またギア段毎のセットに関しても乗り込んでいくうちに自然とギア段ごとの要求が分かりオールギア1マップでは矛盾を感じるようになると思います。

ではギアポジションセンサーを持たない現行のNSF250RではどうすればいいかというとM232-GP3にはリヤスピード計測を追加すればRPMとリヤスピードの関係からギア段をリアルタイムに認識することが可能となります。このギア段の認識はエンジンブレーキコントロールだけでなく燃料噴射量/点火進角/シフター失火(リタード)時間などのコントロールにも使用できます。

 

二つ目は、学習機能の付いたA/Fフィードバック制御です。

まず、A/Fのフィードバック制御とはどんなものか簡単に説明しましょう。 

A/Fとは Air/Fuel つまり空気と燃料の重量比率のことで、日本語では空燃比と呼んでいます。吸気の空気量と供給燃料の混合比を数値化したもので、通常排気管につけたラムダセンサーで排気管内の排気ガスを計測しそこからその排気が燃焼した際の混合比を推定するものです。 このA/Fの値が大きいといわゆる ”燃料が薄い”、数値が小さいと ”燃料が濃い” という状態です。

理想的なA/Fの値はエンジン回転数やアクセル開度や用途により異なりますが、フィードバック制御とはターゲットとするA/Fの値をあらかじめ設定しておき、ベースマップを元に噴射される燃料が実際に燃焼したときにその結果として得られるA/Fの値とターゲットの値との差を比べ、基本燃料噴射量に対して燃料の量を”増やす””減らす”の判断をしてECUが次の最終燃料噴射量を決める制御です。 

この制御のおかげで、仮に吸入空気量が変わったとしても、ECU側で自動的に燃料の量を調整するので、常にターゲットとなる空燃比を得ることが出来ます。 つまりいつも自分の設定したターゲットに近いエンジンの燃焼状態を保つことが出来るようになるのです。

さらに学習機能が付いていると、あるエンジン回転数・スロットル開度での補正値をECU内に記憶しておき、次に同じエンジン回転数・スロットル開度の時に前回の補正値を元に補正を行うため、補正を繰り返すことで補正の量が微量になってゆき、A/Fのターゲット値への補正をより正確に適正に行うことが出来るようになります。

またここで誤解の無いよう解説しますが、このM232-GP3のA/Fフィードバックの制御スピードと正確さはサブコンなどについているオートチューニングといわれているモノとは雲泥の差であることです。レイクラフト取り扱い製品で比較すればこのM232-GP3のA/Fフィードバックの制御スピード、正確さ、はうそみたいな話ですが マレリのマーベル4と同等で、扱い易さはダントツでNo1です。これは使用すれば必ず実感する超実用的なストラトジ-のひとつです。

 

三つ目は、エンジンコントロールの制御を行うのに、別にセンサー類を追加することなくベースの車両についているセンサー類を使って制御が出来る点です。 また、ステッパーモーターも車両についている純正部品を制御することが出来ます。

それってスゴイこと? と疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、センサー類は金額的な問題だけで解決しますが、エンジンブレーキコントロールのハードウェア側のアクチュエータデバイスである、ステッパーモータータイプのいわゆるISC(アイドル・スピード・コントロール)バルブをオープンループで思い通りに高速で動かす制御は純正のECUにとっても、M232-GP3にとっても大変難しい制御作業です。

余談になりますが10年ぐらい前の安価なフルコンはフルコンメーカー側が使用出来るセンサーやアクチュエータ(ISCバルブ/排気バルブなど)を指定するといった状況でした。逆に言えばそのセンサーやバルブしか使えないといった不便な時代もありました。実際バイクに付いている絶対必要な基本センサー(水温センサ/吸気温センサ/吸気圧センサ/大気圧センサ)やアクチュエータが使えないとこれだけでも大きな出費となってしまいます。

それらエンジンブレーキコントロールのためのハードウェアを純正以外のECUで動かすのはさらに難易度が上がります。 現実にM232ーGP3のコンペティターでもあるミクニ製NSF250R用ECUでは、ステッパーモータータイプのISCバルブコントロールではなく、別にオリジナルのデバイスを外付けしそのデバイスを動かすことでエンジンブレーキのコントロールに使っているようです。詳細は分かりませんがデューティソレノイドバルブをPWM駆動しているのであればM232-GP3でもギア段毎にRPM vs スロットル x GEAR または RPM vs 吸気管負圧 x GEAR で定義するDUTY比を設定することが可能なのでミクニ製NSF250R用ECUと同じエンジンブレーキコントロールも可能ですし、デューティソレノイドバルブとステッパーモータータイプISCバルブの併用も可能です。 

 

また、M232-GP3のメリットはこれだけではありません。それは入出力の自由度が非常に高いことです。例えば以下のような入出力が可能です。

1)シフタースイッチ使用可能タイプ : デジタルスイッチタイプ(ON-OFタイプ)及びアナログタイプ(荷重計タイプ)

2)A/F入力タイプ : CAN 及び アナログ

3)フロントスピード入力タイプ : CAN 及び アナログ

4)トラクションコントロールレベル切り替え入力タイプ : 連続可変(ボリュウム) または UP-DOWN スイッチ

以上の様な自由度があれば今現在所有しているセンサーやアンプが有効活用しやすいのではないでしょうか。   

                       

またスーパーバイク等の大型バイクで流行のトラクションコントロール(以下TC)に関してですがM232-GP3に標準搭載されているTCはよりレースの現実に即したものとなっております。

具体的には前後スピードの差、つまりスリップを感知して作動するものではなくエンジン回転数の上昇率をリアルタイムに演算して必要に応じて点火リタードや失火を実行するいわゆるd_RPMタイプのTCで現場でセットしやすく短時間で効果が体感できる仕様となっています。 

しかし、レーシング仕様のTCの本来の目的はラップタイム短縮であり、どんなコーナー立ち上がりシーンでもライダーはスロットル明け待ちといった考え方に対応した物ではありません。実際にスロットル空け待ちでも転ばないで立ち上がるTCがあるとしてもそのようなシーンでラップタイム短縮が出来るTCはMmotoGPにも皆無であることを知っておいていただきたいと思います。

また意外と知られていないのは、非力な4サイクル単気筒250ccもデータを細かく見ていくとミクロ的にはワイルドなグリップ破綻が発生しているのです。ライダーはこのグリップ破綻を強くは感じないかもしれませんが、他車との差が付きにくいカテゴリーだけにこのような領域の改善も有効なのかもしれません。

またGP3は小排気量がゆえの独特な立ち上がり時のスロットル開度とバンクアングルの関係もあり、立ち上がり時に大きなグリップ破綻を発生させると、修正対応が難しく、非常に高速な車体挙動につながりやすいようです。 この現象の発生を防ぎ、発生したとしても高速な車体挙動を緩和するためにはグリップ破綻が赤ちゃんのうちに修正しなければならない。逆にこの赤ちゃんスリップと上手く付き合っていければオンガス側のラップタイム短縮に貢献っできるのではないでしょうか。

ちなみにM232-GP3と2D GPS Memory Liteの組み合わせ(CAN計測)ではこの赤ちゃんスリップとTC制御値の関係がはっきり分かるので、TC強度の過不足が明確に把握できます。

以上の話しは250cc単気筒なのに大げさだと思うかも知れませんがこれからいろいろなエンジンチューナーが出力を改善していった場合には前後車速計測が不要なd_RPMタイプのTCは大いに有効なのではないでしょうか。

 

次にシフターに関してですがM232-GP3の調整項目は、失火またはリタード時間の長さの設定、スイッチが入ってから失火/リタードさせるまでの時間の設定、失火から復帰するまでの時間の長さの設定など、スムーズで適正なシフターの設定を細かくセットできます。 

また、これは汎用のECUとして当然の機能ですが、吸気温補正、大気圧補正が出来ますので、コースや気象条件が変わってもそのたびに燃料のベースマップを変える必要はありません。これは冬の鈴鹿で走行した後に同じ設定で夏のオートポリスを走行しても燃料セットに関しては無修正で同じA/Fを再現できるということです。

 

このようにECUのことを詳しく見てゆくと、ECUってずいぶんいろいろな仕事をしているのだなということに改めて驚かされると同時に、これだけいろいろなことをきっちり仕事させるには、ECUの作り手も使う側もその機能や用途、その効果や影響を十分理解した上でECUに向き合っていかないと、薬にもなるけど時には毒にもなりうるということを肝に銘じておかなくてはならない気がします。

 

ネコラム2012年9月30日

天高く、M232‐GP3快走@岡山 <テスト編>

まだまだ暑い日が続いてはいますが、空の高さにちょっと秋の気配を感じられるようになってきました。

晴天に恵まれた岡山国際サーキットテスト

先週はここ岡山国際サーキットで全日本ロードレースの合同テストが3日間にわたり行われました。

3日間ともすばらしい天気に恵まれ、危うく駄目押しのうっかり日焼けをしてしまうところでした。

つまらない前置きはこのぐらいにして、今回のテーマはマイクロテックのECU M232‐GP3!満を持しての登場です。

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全日本ロードレースで、GP125に替わり今シーズンより本格的に始まった新カテゴリーGP3は、motoGPのFIM moto3に準じつつ、MFJ独自のレギュレーションも盛り込んだ、4サイクル、単気筒250ccのレーサーのカテゴリーです。

車両は基本的に自由ですが、ECUと燃料ポンプのみMFJで公認された部品を使わなければならないレギュレーションです。 車両は自由といっても現実的にはほとんどのエントラントがホンダのNSF250Rを使っているというのが実状です。

ECUは現在3部品が公認を受けています。 その3つとは、ホンダ純正のケーヒンECU、キャブレターメーカーとしても有名なミクニのECU、そしてレイクラフトのマイクロテック M232-GP3です!

今回、岡山の合同テストで、このM232-GP3を、チームNOBBYのご協力を得てゼッケン4の山本剛大選手にテストしてもらいました。

山本剛大選手1

ここで、M232-GP3についてご紹介しましょう。

M232-GP3は、これまでこのコラムで何度かご紹介してきたマイクロテックのECU M232Rを母体とする派生モデルで、M232Rの基本機能を踏襲しながら、GP3カテゴリーに要求される性能を拡充した機種で、今年4月27日に正式にMFJの公認部品になりました。

GP3というモデル名を冠しているのでGP3車両専用モデルかと思われるかもしれませんが、実は単気筒インジェクションモデルであれば排気量を問わずどんな車両にでも対応できるスグレモノで、モタードのハスクバーナSMR449に搭載し、全日本moto1オールスターズのYassyこと松本康選手が今シーズン好成績をあげたことは以前こちらのコラムでも紹介したのでご記憶の方もおられるかもしれません。

M232-GP3の主な特徴は3つあります。

1. きめ細かなエンジンブレーキコントロールが出来ること。

2. 学習機能の付いたA/Fフィードバック制御があること。

3. エンジンコントロールの制御を行うのに、別にセンサー類を追加することなくベースの車両についているセンサー類を使って制御が出来る点こと。 また、ステッパーモーターも車両についている純正部品を制御することが出来ます。

以上の3つの特徴についてのさらに突っ込んだ話しは次の<スペック編>で詳し~くご紹介します。

ECUの仕様の話しにそれてしまいましたが、いよいよテスト走行の話しに戻ります。

3日間のテストの初日は、ECUの取り付けです。 あらかじめチームNOBBYのチーフ中山氏にフロントカウルのステイの加工をお願いし、ECUを取り付けできるように準備しておいて頂きました。

M232-GP3マウント1

M232-GP3マウント2

走行は夕方1本だったので、まずECUの作動確認とベースマップの確認を行いました。

データを確認するシバ主任技師

ここで、ライダーからエンジンのパワー感のコメントやエンブレのフィーリングなどを聞きセッティング。

2日目のテストでこのセットを試してもらい、エンプレのフィーリングなどをさらに微調整しセットを進めました。

ライダーとデータを確認する

山本剛大選手のコメントは若手ライダーながらなかなか明解です。 セット換えした後のフィーリングも的確にフィードバックしてもらえました。

ライダーのコメントを聞く主任技師。後ろはチーフの中山氏と森俊也ライダー

3日目はこれまで進めてきたセッティングをもとにタイムアタック。 3日間のテスト走行の中でGP3カテゴリーの2番手のタイムとなり自己ベストも更新しました。

このことはM232-GP3がSTD ECUと比較して大きなパフォーマンス不足はないと考えてもよいのではと思っています。 こんなことを言うと少し奇異に感じられる方もいるのではないかと思いますが、STD ECUに対しての基本的なレイクラフトの考えは、「メーカーのECUは優れている。」ということです。

なぜなら、STD ECUは多くのエンジニアが多くの工数をかけて最終GOサインを出したものだからです。しかし、コスト制約やターゲットユーザーを考えた場合STD ECUの限界という点も否定できません。

一方、レイクラフトで扱う汎用ECUの方がコストも、導入の手間もかかりますが、それを超えるだけのパフォーマンスや満足が得られる可能性も持っていて、ユーザーの皆さんに喜んでいただけるものと確信しています。そのためには少なくても導入時点でSTD ECUと同等のレーシングパフォーマンスが無ければ比較対照のスタート地点に並ぶことは出来ないと考えています。

コースイン

この3日間で、M232-GP3の貴重なテストを行うことが出来ました。 ご協力いただいたチームNOBBYに心より感謝いたします。

そして、NSF250Rの現状のECUセッティングに満足出来ていないライダーの皆様、もっと細かく深くセッティングできればと思っていらっしゃるチームの皆様、この機会にぜひレイクラフトのお勧めするマイクロテックM232-GP3をご検討いただければと思います。

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