マイクロテック社には、特定の車種に対応したプラグインECUが各種あるが、今日はMVアグスタF4対応のプラグインECUであるM191をご紹介したいと思う。
M191は、F4に搭載されている純正のECU(マグネッティ・マレリ製)と形はほとんど一緒で、青のアルマイト仕上げになっている。(私たちは通称”青箱”と呼んでいる)
赤いブラスチックロックの付いたカプラは純正のままで使用、その間の小さなコネクタはECUとの通信や他のデバイス、例えばラムダアンプ、ダッシュメーターなどとの接続のための配線となっている。
M191はPCとの通信はシリアル通信だが、ラムダアンプ等のCANデバイスとはCAN通信が可能だ。この車両ではダッシュメーターに2D製のBigDashを搭載し、CAN経由で、車速、エンジン回転数、スロットル開度、水温、吸気温、バッテリー電圧などECUからのデータをダッシュに表示している。
こちらの車両は、ECUの取付からセットアップ、シャシーダイナモでの作動確認まで入れてほぼ1日で作業は完了した。プラグインECUの威力だ。 ちなみに、ロガーでデータをチェックしながら燃料を合わせた結果、馬力はECUを変える前に比べて約5馬力アップとなった。
参考までに、この”青箱”に対し、”赤箱”というものが存在するらしい。これは、MVアグスタのキットパーツとして欧州で販売されているもので、この赤箱もマイクロテック社が生産を委託されている。
赤箱がどの様なユーザーを対象に供給されているかは定かではないが、青箱とは一部のロジックやストラトジが異なり、レースユースに特化した物であることは確かだ。
その一方で、この青箱に設定されているベースマップはMVアグスタ社から供給されており、マイクロテック社とMVアグスタ社の信頼関係の深さがうかがい知れるし、また、それがレース文化に根ざしたヨーロッパの粋なスピリットでもあるのかもしれない。
このところ堅い話が続いたので、今日はチョッとおいしい話。
昨年の12月にドイツの2D社に行った時、2Dの社長のうちのひとり、Debusの家での晩ご飯に招待された。(2DはDebusとDieboldという二人が設立した会社、二人の頭文字を取って2D。わかりやすい。)
晩ご飯のメニューは”シュペッツレ” ドイツ南西部の料理らしく、手作りパスタといったところか。これを集まったみんなで作った。 私は玉ねぎのみじん切りをまかされた。 どっちが刃なのか分からないような切れない小さいナイフでのみじん切りは結構タフ。
レシピは至ってシンプル。小麦粉に卵と塩と水を加えてドロッとした状態になるまでひたすらかき混ぜる。
この生地を、沸騰したお湯の中に専用の押し出し器で入れて茹でる。あとは、塩コショウでいためた玉ねぎ、ベーコンと合わせてキャセロールに入れて上からたっぷりとチーズをかけてオーブンへ。
Debusが自らみんなに取り分ける。
お味はかなりあっさり。食感はショートパスタというよりはちょっとうどんに近い感じ。
確かにこのシュペッツレ、付け合せでも単品でもよく出てくる。ドイツ料理は量が半端ではないので、付け合わせといってもお皿の半分を占領するぐらいたっぷり山盛りだ。シュペッツレそのものは味を主張しないので、こってりした味のものと合わせてもかなりいける。もちろんこの日のシュペッツレ・ケーゼ(ケーゼはチーズのこと)もおいしかった。ごちそうさまでした。
仕事上、毎日何通ものメールを書く。取引先とのやり取りがほとんどなので、どちらかというと日本語より英文でメールを書くことの方が多い。
英文のメール、特にビジネスメールは端的で書きやすい。英語のスキルの話ではない。英文のメールは時候の挨拶やら本題に入る前のお決まりの社交辞令なしにストレートに本題に入れるから無駄が無い。 聞きたいことは率直に聞く、言いたいことははっきり言う。これが無礼でも失礼にもならないからとても話はシンプルに進む。
当然答えも明快に返ってくる。明確に答えられない場合は返事は返ってこない。それは、答えが明快に回答できるまでいい加減な時間延ばしの無駄なやり取りをしないのだ。これは、Eメールに限ったことではない。レターやFAXでのやり取り(今は極端に少なくなったが・・・)でも同じことだ、英文のビジネスレターには無駄が無い。
もちろん、人によっては、天候の話や休暇にどこに行ってきたかなどの話をすることもある。決して日本人だけが天気の話が好きなわけではない。
それに比べて日本語のレターやEメールはどうだろう。とりあえず、お世話になっていなくても、お世話した覚えが無くとも、「いつもお世話になっております。」から始まり、本題に入るまで結構遠回りが多い。いよいよ本題かと思っても、あいまいな表現で何を言いたいのかはっきりわからないことが多かったりする。なのに、結構長文だったりする。最後まで行っても結局良く分からないまま、「よろしくお願い致します。」となる。何をよろしくなんだろうかと聞きたくなることがよくある。
かといって、英文のメールのように書いたら、きっとぶっきらぼうで礼儀を知らないヤツと思われるのが関の山だ。日本語は礼儀と相手への尊敬を重んじる言葉なのだ。それに、日本語は微妙なニュアンスの違いで相手の受け取り方が変わってしまうことがある難しい言葉だ。
私は、日本語でメールを書くときにいつもこのジレンマと闘っている。
前回のコラムでCANの話が出たので、今回は簡単にCANについて話をしてみたいと思う。
前回の繰り返しになるが、CANはControl Area Networkの略で通信規格のひとつである。ドイツのBosch社が提唱し、後に国際規格として標準化されたのだが、詳しいことは様々なサイトで紹介されているので、興味のある方は調べてみて欲しい。
ここでは、CANのメリットを紹介したいと思う。まず第一に、複数のデバイス間において、それがメーカーの異なるデバイスであってもCANという共通の通信規格を使用することで相互に簡単にデータのやり取りが可能になることである。例えば、マイクロテックのECUに、マグネッティ・マレリのラムダアンプ、ダッシュディスプレイはMoTeC、ロガーは2Dという組み合わせも、CANを使えば、簡単にシステムを構築することが出来る。
第2に、CANは信号線が2本だけで済む。これに電源とグランドを加えても4芯のケーブルでまかなえる。これがどれほど便利かというと、上記のような複数のデバイスを接続する際、それぞれのデバイスを繋ぐ配線が4芯1本で済む。これは、配線の軽量化に大いに貢献できる。
もし、CANがなかったらどうだろう。水温をメーターにも表示し、かつロガーでも計測したいとなった場合、水温センサーを2つ付けて1つはメーター用、もうひとつはロガー用に配線するか、1個のセンサーの信号を分岐して配線することになる。ただし、センサーによっては信号を分岐できないものもある。このようなセンサーが複数あるとしたら・・・、想像するだけでも結構な工数だ。
CANは欧米では相当普及している。電装分野のグローバル・スタンダードといっても過言ではない状況だ。事実レイクラフトで取り扱っている製品は基本的にすべてCANに対応している。しかし、残念ながら日本ではCANの普及が遅れている。日本の電装部品メーカーの製品はCANではなく、各社独自の通信方法を採用していることが多い。
他業種でも日本のガラパゴス化が懸念されているが、電装関係もその傾向が強い。独自であることが孤立にならないことを願いたい。
今シーズンの全日本ロードレース選手権に、Ducati1098Rで参戦しているチームスガイレーシングジャパンの車両にはマイクロテック社製のM197というECUが搭載されている。
このECUは、当サイトの”Products”のページでもご紹介している通り、Ducatiの純正ECUとの置き換えで搭載可能ないわゆる”プラグイン”タイプのECUだ。このECUに加え、同じくマイクロテック社製のM163というラムダシステムと2D社製のデータロガーを使って、計測と制御を行っている。
マイクロテックのECUはCAN(*1)の能力が非常に優れており、様々なCANデバイスとの接続が非常に簡単に設定でき、またECUから非常に多くの制御項目がCANのデータとして出力されているので、この有益なデータを、同じくCANの性能の高い2Dのデータロガーに入力し計測している。
チームスガイレーシングジャパンの1098Rでは、上記のような電装システムで計測したデータをもとにECUの制御に反映させてエンジン・セッティングを行っている。
<用語の解説> *1 CAN: Control Area Network の略で、通信規格のひとつ。 自動車等に使用されている電装デバイス間の通信に使用されることが多く、転送データはCAN_IDとオフセットで識別されbus上に流される。