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Column

2011年8月6日

8耐レビュー その1 <芹沢の28周>

suzuka8h

8耐、終わりました。

レイクラフトがサポートあるいは部品を供給させて頂いたチームについて、レイクラフト的切り口でレビューしてゆきたいと思います。

なお、写真を撮る時間が全くなかったため画像がありません。悪しからずご了承ください。

<追記>

宮城県仙台市から8耐を観戦に行かれた知人の方から貴重な写真を提供して頂きましたので掲載させていただきます。ありがとうございます。

緊張のスタート直前

EVAレーシング・トリックスターのレースは、まさに地獄の底からのスタートになりました。 サイティングラップでマシンにトラブルが発生し、とっさの判断で急遽Tカーに乗り換え!

しかしこのタイミングでのトラブル発生はむしろラッキーだったのかもしれません。スタートした後ではTカーへのチェンジはできません。運があったのだと思います。 昨年のPLOTチームの8耐コラムでも取り上げましたが、プライベートチームでTカーがメインカーと同等に機能する状態になっているということは本当にすばらしいことです。

確かに決勝に備えてメインカーにすべて良いほうの部品を投入していたことは事実です。しかし、いざという場合に備えていつでも出動可能な状態でTカーを準備していたことも事実です。わたしたちも当然ECUにはメインカー、Tカー同一のマップファイルを注入済み。データロガーも8時間計測できる準備をしていました。

芹沢の怒涛の追い上げ

ピットスタートからの怒涛の追い上げで、ルーティンのピットイン時点ですでに12番手まで浮上した芹沢選手の走りは本当にすばらしかった。

そして、その走りと同じくらいすばらしかったのは芹沢選手の燃費の良さでした。

芹沢選手はその熱血的なキャラから、いかにも豪快な走りでアクセルも極力深い開度をキープしているんじゃないかというイメージを持たれている方もいらっしゃるのではないかと思いますが、実はそうではないのです。

芹沢選手の走りのポイントはその繊細なアクセルワークにあると思います。加速の初期はタイヤの駆動を確かめながらスムーズに回転を上げ加速してゆく。また、減速ではアクセルを極力あおらず、エンジン回転が下がってゆくのを待ちながらシフトダウンする。要するに、加速減速に必要最低限のエンジン回転回数しか使わないようにするということです。このような走りは耐久レースの走り方としては理想的です。芹沢選手がこれを常に意識しているのか、耐久の走りとしてすでに身についているのかはわかりませんが、このアクセルワークは特筆すべき点です。

昔の話になりますが、2001年から2004年までKENZで参戦していた北川圭一選手もそのアクセルワークはすばらしく、特にS字の無駄のないアクセルワークは芸術的でした。

話しはレースに戻って、レースの燃費の想定は1タンク27周。(タンク容量は24リッター規定) このガイドラインに沿って絞り過ぎないぎりぎりの燃料消費量を目指す燃調を設定していました。 本当は燃費に余裕を持たせようとすればもっと大胆な燃料カットなども可能なのですが、ライダーの望むドライバビリティを確保しながら燃費も成り立たせようとするとどうしても燃料を絞ることは難しくなる。さらに、テストの日程が限られていて、燃費マップをテストする時間がほとんどなかったことから、ECUからの燃料消費量データを元に想定消費量を割り出すしかない状況でした。

レイクラフトのコラムを熟読されている方ならよくご存知かと思いますが、マイクロテックのECUは燃料消費量をCANでデータストリームしてくれるので、これを2Dのデータロガーで計測すると、1周ごとの燃費はもちろん、1周の中の任意の区間の消費量も確認できるのです。

あと10cc、あと5cc、といった具合で、走りに影響の出ないであろう部分をピンポイントで燃料を削る地道でテクニックのいるマップの作り込みが続きました。 しかし、最大のブラックボックスは出口選手の燃費。 彼の燃費マップでの走行データがほとんどない!

そして案の定レースが始まってみると、出口選手の燃費が想定より良くないことが判明。1タンクで27周が難しくなりました。そうなるとどこか別のところで周回数を増やさなくてはならない。

”芹沢で28周できないか?”

事前テストで、トップ3強(TSR,ヨシムラ、HARC)はすでに28周を達成したことが情報として入ってきていましたが、このチームの想定ラップタイムでは28周は必要ないし、現実的に無理と思っていました。

ここにきてこんな難しい課題が浮上するとは・・・

第1スティントと第4スティントの燃費から芹沢選手の燃費が想定より良いことを確認したうえで、6スティント目で28周走行を決断。 サインボードでL2が提示されてからの時間がこれほど長く感じられたことはありませんでした。

給油後の計測ではなんと消費量は22.6リッター! もう1周いけたかというほどの好燃費。 しかもこのスティントではゼッケン25番の鈴鹿レーシングと抜きつ抜かれつの熾烈なバトルを繰り広げていたにもかかわらずです。1タンク29周の可能性を感じさせる結果となりました。

恐るべし!芹沢太麻樹。

レース後、車検場のEVA初号機

この28周でその後のスティントの周回数負担が軽減しチームは快走。 EVAレーシング・トリックスターはトータル211周で総合5位の結果を収めました。

この後もレビューは続きます。 お楽しみに!

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