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ECUについての説明をただ字だらけで長々と書いても、退屈で小難しいだけになってしまいますので、わかりやすく読みやすいQ&Aの形式にまとめてみました。ですから回答は必ずしも質問に対する答えにはなっていない場合もありますが、このQ&Aを通してECUというものに対する理解を少しでも深めていただければと思います。
また、ここに載っていないご質問も随時受け付けております。取り上げて欲しい質問があればご連絡下さい。
ECUは Engine Control Unit の略で、簡単に言えばエンジンを制御するコンピュータです。では、何を制御しているのでしょう。基本的には、燃料の量、燃料の噴射タイミング、点火するタイミング、この3つをコントロールしています。
具体的に何のために制御しなければならないかというと、いろいろな運転条件の変化により、吸入空気量が変わると、それに見合った燃料の量、燃料噴射タイミング、点火タイミングが必要になってきます。
たとえば、アイドリングしているときに必要な燃料は少ない量で済みますが、全開で加速しているときには多くの燃料が必要になってくるということは容易にイメージできるでしょう。実際に走行する場合、アクセルを多く開ければ空気はたくさん入り、それに見合う燃料の量も増加し、逆に閉めれば少なくなります。このように吸入空気量は様々に変化しますから、その状況にあわせた燃料と点火の調節が必要になってきます。これを仔細に制御するのがECUの基本的な仕事です。
一般的に、車両メーカーが個々の車両に合わせて取り付けているものを純正ECU,車両を限定せずに取り付けることが可能なものを汎用ECUと呼んでいます。
ノーマルの車両のままで走る場合は、純正のECUで何も問題はありません。
しかし、排気管やエアクリーナーエレメント、エアボックスなどの吸入空気量が変化する可能性のある部品を付けた場合、その限りではありません。
それは、それらの部品を付けて吸入空気量が変わってきても、純正のECUではその変化に見合った燃料の量に変えることが出来ないからです。
良かれと思って排気管を換えたのに、かえって乗りづらくなったり、馬力が落ちたりするのはこのようなことが原因であることが多いのです。
また、純正のECUであっても制御内容が常に完璧ということはありません。純正ECUは万人向けではあってもあなた専用に作られているわけではないからです。ライダーの乗り方により、ドン付きがきついとか、Uターンで立ちゴケしてしまうほどアクセルのコントロール性が悪いなど、いろいろな不満が出てくることも少なくないはずです。汎用ECUはそのような不満を解決するのに真価を発揮できるツールのひとつといえます。
現状で満足しているのであれば換える必要はないでしょう。
サブコンは、純正ECUが燃料や点火時期を制御している状態において、その制御内容に上乗せの形式で変更を加えるデバイスです。つまり、基本的な制御を行っている純正ECUの補助的役割(sub)を行っていることから“サブコン(Sub Computerの略)”と呼ばれているようです。そして、その“サブコン”に対し、純正のECUに代わってすべて(full)の制御を行うものが“フルコン(Full Computer)”と呼ばれているようです。レイクラフトでは汎用ECUと呼んでいます。
この二つの最大の違いは、ベースマップを持っているかいないかという点です。
ベースマップについては別の質問項目の答えで説明しますが、純正ECUは多くの場合ベースマップは公開されていません。つまり、ECUの基本となる3つの制御項目(燃料の量、燃料の噴射タイミング、点火のタイミング)の絶対値がユーザーには全くわからないわけです。
サブコンは、その絶対値のわからない制御内容に、比率や度数でプラス/マイナスの調整を行うという、非常にアクロバティックな、誤解を恐れずに言わせていただけば、非常にあいまいな仕事をしていることになります。さらに言えば、ユーザーがその調整の値をどのように決めているかというと、恐れる無かれドライバー/ライダーのフィーリングに依存していることが少なくないのです。データロガーや空燃比計を使って、A/Fの数値を確認しているのであればまだ救いはあります。しかし、そのような計測ツールを使っていても、結局のところベースの絶対値がわからないところに、「n%をプラスして・・・」と調整しても、修正したゾーン(rpm vs. TP)によっては、思ったとおりの結果を得ることが非常に難しい場合があります。。
一方、汎用ECUは、ベースマップを自分で作ることが出来ます。ほとんどの制御項目をすべて任意に設定できるのです。ですから、制御内容の調整値も直接書き換えが可能です。
汎用ECUを使うことが、即、ドン付きの解消に役立つわけではありませんが、目指すゴールに早く確実に近づけることは確かです。
いいえ。決してそうではありません。
サブコンは価格的にも汎用ECUに比べればお手軽ですし、導入しやすい感じがするのは事実だと思います。
しかし、制御や計測の世界では、価格と性能や精度、得られる結果や満足度は確実に比例します。制御は非常に繊細です。かゆいところに手が届くかどうかということはとても重要なポイントです。
汎用ECUは決して安い買い物ではありません。だからこそ充分納得した上で導入を検討していただきたいのです。
全くの素人と言っても、このページに興味があるならそれで資格は充分ですし、パソコンを使うことに抵抗が無ければ何の問題もありません。
汎用ECUも、それを動かすソフトウェアも、そのソフトを操作するパソコンも、基本的には単なるツール(道具)に過ぎません。肝心なのは「何をどうしたいか」という思想です。
話が少しそれますが、レイクラフトに問い合わせしてこられるお客様の多くは、「汎用ECUやデータロガーで、何が出来るんですか?」というご質問をされます。しかし、私たちがお客様からお聞きしたいのは、「○○をしたいのですが、出来ますか?」という言葉なのです。
別に専門的な知識や、難しい専門用語などは必要ありません。ただ、具体的に、
「ドン付きを何とかしたい。」 「エンブレのフィーリングを改善したい」 「Uターンで立ちゴケしないようにならないのか?」 「アクセルの付きが悪い」 「自分は本当に全開に出来ているのか?」といった現状の不満点をそのまま聞かせていただきたいのです。処方箋はたくさん持っています。
まずはご相談下さい。
残念ながら、汎用ECUは、馬力を運んできてくれる魔法の玉手箱ではありません。
汎用ECUを取り付けることは、セッティングのゴールではなくスタートなのです。しかしそのスタートは、馬力の向上だけでなく、乗り味の改善、スムーズなアクセルのオン/オフ、進入時のエンブレ対策、二次旋回でのトラクションフィーリングの改善など、さまざまなメリットを享受できる“可能性”のスタートなのです。
ではECUを換えたら何が必要になってくるでしょうか。それがECUセッティングです。広義ではエンジンマネージメントといってもいいでしょう。
セッティングについては、ここで端的に説明することは難しいので別の機会に改めてご説明しますが、ポイントだけをかいつまんで言うと、セッティングには「計測」⇒「解析」⇒「制御」のプロセスが必要です。このプロセスについては、“About us”のページの「コンサルティングとサービス」の項目で図解で説明をしていますのでそちらをご覧下さい。
市販されているバイクに搭載されている、いわゆるスタンダードECUはいろいろなユーザーがいろいろな場面で大きな問題が発生しないような優秀なセッティングがインプットされています。このことはDUCATIでも例外ではありません。しかしながらこの多目的なセッティングがワインディングロードやサーキットでベストセッティングかどうかは別です。
ここで二次旋回とECUの関わり合いを簡単に説明することにします。
二次旋回という言葉の定義をここではクリッピングポイントを通過して加速しながら旋回していく状態ということにしましょう。また二次旋回時の乗車フィーリングは決してECUだけで変わるものではないことも前提としてイメージして下さい。しかしながらサーキットにおいてこの二次旋回とECUセッティングというものは非常に深い関係にあります。まずはクリッピングポイントを通過してスロットルを開けながらコーナーを立ち上がっている自分をイメージしてください。ここで大多数のDUCATIユーザーはリアアームを介してタイヤが強く地面に押し付けられた状態のいわゆる「トラクションの効いた」加速を体験したことがないはずです。多くのDUCATIユーザーは「スロットルオープンで外側にはらんでしまう」「スロットルの開け始めから開度20%位までの反応が鈍い」といったフィーリングをもつことが多く、本来の二次旋回の気持良さを体験しているユーザーは少ないと思います。 特にクラブマンレーサーの中でも中級から上級クラスのレースにエントリーしているライダーがこの問題を抱えている場合が多い傾向にあります。
この原因のひとつにDUCATIのスタンダードECUにはサーキットユースにおいて「スロットル開度に対する駆動力増加率のアンバランス」というセッティング上の問題があげられます。簡単に言えばECUのセッティング上の特性で「コーナー立ち上がり時に必要なパワーがワンテンポ遅れて発生する」という傾向にあります。このタイムラグは中上級ライダーにとってはコーナー立ち上がり加速時に必要なトラクション確保に大きなマイナスとなるだけではなく、このマイナスは車体系、サスペンション系のセッティングではなかなか改善できません。しかしながらこのマイナスはDUCATIエンジン本体の問題ではなくECUセッティングの問題なのです。ここで誤解してはいけないのはこのサーキットユース時のネガがストリートユースではプラスの場合もあるということです。
結論的にはNEMESISを使うことによっていろいろな用途において手軽にベストセッティングが出来るようになるということです。今後HPコラムでサーキットユースとストリートユースの要求性能の違いやサーキットユース時のセッティングヒントなども掲載する予定です。
汎用ECU(あるいはフルコンと呼ばれている)は、文字通り汎用です。つまり、適応車種を選ばない造りになっています。もちろん、ECUのグレードにより、対応可能なシリンダーの数、駆動できるインジェクタの本数、サブスロットルを駆動できるか否か、等々取り付ける車両によりどのECUを使うのが妥当かという選択は必要です。しかし汎用ECUであれば基本的に対応可能な車種の選択肢は多いです。そのかわり各車種に適応させるため、取付け時には専用のハーネスが必要になったり、シグナルローター(*1)を作り変えたりなど、導入・取付に結構な時間と工数が掛かります。
一方プラグインECUは、適合車種が限定されていますが、ハーネスの作り替えなどの手間は一切掛からず、純正のECUをはずし、そのコネクタにそのまま差し込むだけで取付は完了します。 プラグインECUは基本的に純正のECUと全く同じコネクタで作られているからです。
<用語の解説> *1シグナルローター : ECUは基本的に点火や燃料噴射のタイミングをクランクアングルセンサーやカムアングルセンサーから拾います。このタイミングを決めるためのトリガーとなるのがシグナルローターです。