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ネコラム2019年10月20日

YZF-R1 + MecTronik MKE7 完検!

その日、スポーツランド菅生は秋晴れのきれいな青空が広がりました。

朝方は少し肌寒さもありましたが、これからのスポーツ走行を控え期待と不安で体温は否応なく上昇してゆきました。

今日は、いよいよMecTronik社製ECU MKE7を積んだYZF-R1の完検走行です。

皆さんもご承知の通り、来シーズン2020年から全日本ロードレース選手権にST1000クラスが新設されます。

10月上旬にはMFJから正式に技術仕様についてもリリースがありました通り、ECUについてはST1000用MFJ部品公認ECUへの変更が認められます。

レイクラフトでは昨年より販売を開始したMecTronik社製ECUであるMKE7(エムカッパイーセブン)で各メーカーのスーパーバイクでの適合とセットアップを進めてきました。MKE7についてはこちらから⇒MKE7

ヤマハYZF-R1については、今年6月からプロジェクトをスタート。MecTronik社製ECU MKE7を搭載し、始動性の改善、ベースの燃料マップや点火時期のセット、シフターのフィーリング調整、出力チェックなど、仙台のフクダテクニカさんのご協力を得てシャシーテストなどを重ねてきました。

そしていよいよこの日、完検を迎えました。

 

テストライドをお願いしたのは、これまでシャシーテストなどでも協力して頂いていた秋吉耕佑ライダーです。

 

テストで使用するYZF-R1の車両は全くのスタンダード仕様、タイヤもブリヂストンの市販品でこの日のテスト開始時点ですでに30周前後走行している状態のタイヤです。

スポーツ走行は午前中1本と、午後4本の合わせて5本でトータル78ラップ走行を行いました。

そして驚くことに、午後の2本目の走行では1分31秒台前半のタイムを連発、ベストタイムは1分31秒19を記録。この時点でこの日だけですでに40ラップ(トータルでは70ラップ前後)走行しているタイヤでこのタイムを叩きだしました。タイヤをフレッシュにすれば1分29秒台も現実的に見えてくる状況です。

 

次にダッシュディスプレイに関してですがその時のダッシュディスプレイの表示がこちら。

今回テストに使用したダッシュディスプレイはアメリカのAEM社製のダッシュで、GPSを使用したラップタイムを表示し、実走タイムの他に予測タイムや一定区間ごとにベストタイムとのタイムギャップを表示してくれます。

画面中央に緑文字で+0.00と表示されている部分が走行中にプラスやマイナスの数値で、ベストタイムに対する一定区間ごとのタイムの上下をライダーに知らせてくれる”ヤル気”ディスプレイとなっています。このディスプレイについてはまた別の機会に詳しくご紹介します。

 

ちなみに、この日の完検はあくまでベースセットの確認なので、秋吉選手のコメントに沿ってエンジンブレーキの調整は少し行いましたが、トラクションコントロール(以下TC)やウィリーコントロール(以下WC)はすべてOFFの、制御はいわゆる”素(す)”の状態での走行です。

タイヤをフレッシュにすることに加えTCやWCのセッティングも進めれば安全に1分29秒台で走行できるのではないでしょうか。またこのMKE7は内蔵のIMUでリーンアングル計測が可能なので、リーンアングルを考慮したTCのスリップターゲットが設定でき、きめ細かなセッティングが可能となります。

 

 

ストック仕様の車両で、尚且つ履き倒したタイヤでこのタイムはさすが秋吉選手です。

そして、MKE7 も十分にその性能の高さ、耐久性、信頼性を確認することが出来ました。

来シーズンのST1000クラスへのECUとして準備は整いました!

 

ネコラム2019年8月4日

GSX-R1000 + MecTronik MKE7 シェイクダウン完了!

昨年後半からの構想を含めると約1年弱のプロジェクトがついにシェイクダウンの日を迎えることが出来ました。

 

九州の荒瀬貴さんからECUのご相談を受けたのが昨年2018年の9月だったと記憶しています。

荒瀬さんとレイクラフトのお付き合いが始まったのは遡ること8年前、同じく九州出身のロードレースライダー秋吉耕佑選手から紹介して頂いたのがきっかけでした。荒瀬さんと秋吉選手は若い頃からのレース仲間で今でもその親交は続いています。

荒瀬さんにはこれまでもレイクラフトの電装部品を数多く導入して頂き、また同じく九州のライダーの皆さんにも広く展開して頂いています。あの当時はカワサキのZX-6Rでレースをされていて、マイクロテックのECUと2Dのデータロガーを搭載して頂きました。

その時の詳しいお話はこちらのコラムをご覧ください。

6Rに乗っとっと?

 

そして今回は新車導入されたスズキ GSX-R1000 L7にECUを搭載したいとのご要望でしたので、いろいろ検討した結果、この車両にはMecTronik製のMKE7が最適と考えプロジェクトがスタートしました。MKE7についてはこちらからMKE7

 

2018年の年末から明けて2019年の2月にかけてハーネスの製作、ベースマップの作成などECU導入に必要な作業を進め2月下旬にようやく火入れを行うことが出来ました。

 

しかし、その後なかなかスケジュールの調整がつかず、5月に車両を仙台まで搬送して頂きフクダテクニカ様のご協力を得て台上テストを行うところまでこぎつけました。

 

この時は秋吉耕佑ライダーに台上セットの乗車をお願いしました。台上テストでは、基本的な燃料、点火時期のセットに始まり、シフターのファインチューニングまで進めることが出来ました。そして、6月末にいよいよオートポリスでシェイクダウンの予定だったのですがあいにく九州地方の大雨のためサーキット走行がキャンセルとなり出直しを余儀なくされてしまいます。

そうしてようやく今回8月2日~3日の2日間、晴天に恵まれたオートポリスサーキットで念願の実走シェイクダウンが実現しました。テストライダーはもちろん秋吉耕佑選手です。贅沢です!

 

 

初日はECUの制御項目の作動確認を行い、2日目にはローンチ・コントロールのセットアップやトラクションコントロールのレベルの最適化など実走でしか確認できない重要項目をテスト消化することが出来、無事にシェイクダウンを終えました。

ただ、今回のテストでは基本的な作動確認と初期のセットアップが済んだだけで、車両全体のセットアップも含めた今後の課題も見えてきたのでこれからのセッティングでどこまで進化させることが出来るか、さらにチャレンジは続きます。そして、今度はご本人のライディングでも乗り味を確認して頂ければと思っています。

ところで、「荒瀬貴」の名前に見覚えのある方も多いのでは?

そうです!2017年の全日本ロードレース第5戦オートポリスのJSB1000クラスで、荒れた天候の中ポールポジションの浦本修充選手と3位の加賀山就臣選手の間に割って入り見事予選2番グリッドを獲得したライダーです。あの当時はヤマハのYZF-R1にピレリタイヤという組み合わせで全日本ラウンドにスポット参戦されていました。その時の詳しい記事はこちらから ⇒ 予選レポート

 

 

ネコラム2018年12月26日

奇跡の748SP <バージョンアップ編>

奇跡のバイクが奇跡の地に戻ってきました。

懐かしい風のにおいと、すっかり開発が進み様変わりした仙台港近辺の景色にきっと748SPも驚いたはず!

普段はクールなフクダテクニカさんも久しぶりに会う748SPにウルッと来たのか来なかったかは定かではありませんが・・・(笑)、とりあえずバイクは無事仙台に到着しました。

久しぶりに会った748SPは、いろいろと変化していました。カウルも、メーターステーも当時とは別のものに変わっていました。

それはそうですよね、もう7年も経ったのですから当然です。

ところで、今回取り付けるスターレーン社製のDavinci-IIは、様々な種類のダッシュディスプレイを製造しているスターレーン社の最新のトップエンドのモデルで、コンパクトなボディに収まった鮮やかなカラー液晶ディスプレイ、内蔵のGPSと世界中の主要サーキットマップのデータを用いた正確なラップタイム表示、内蔵慣性センサーによる左右最大バンク角の表示、その他書ききれないほどの盛りだくさんな特徴を持っています。

また、主要車種に対応したプラグ・アンド・プレイのアダプターハーネスも用意されていて、ウインカーや水温、燃料警告灯、ヘッドライトの点灯表示、ハイビームランプの表示、ニュートラルのランプ、オドメーターなど標準のメーターに表示される内容もバッチリ網羅されています。スゴ過ぎます。

おまけに、別売りのワイヤレスモジュールを追加して、サスペンションのストロークセンサーや空燃比を計測するラムダセンサーをモジュールに接続しておくと、データロガーとしても使用でき、そこで計測している内容を無線でダッシュディスプレイに飛ばして表示しちゃうというアクロバティックなことまでやってのけるのです。

ただ、今回このダッシュを取り付けるDucati 748SP用にはアダプタハーネスは用意されていないので、汎用のユニバーサル・ハーネスを使って接続していきます。

これが、意外と大変でした。

エンジン回転数、水温、燃料警告センサー、ギアポジションなどそれぞれの項目を一つずつ拾って正確にダッシュに表示するようにセットしていかなくてはなりません。このあたりがメーターの換装の難しさです。

カスタムの匠、フクダテクニカさんと綿密に打ち合わせ。

全てのセットアップを完了してパワーONした時の感激はひとしおでした。

Davinci-II Neutral lamp ON

Ducati 748SPは、もはやDucatiのラインナップの中でも旧車の部類に入るモデルですが、今回奇跡の再会をきっかけに、ダッシュメーターをバージョンアップしてイキイキと走る姿を想像すると、名車よ永遠なれと思わずにはいられませんでした。

スターレーン製Davinci-IIの詳細はProductsのページでご紹介しています。

Davinci II-S ダヴィンチII-S

 

ネコラム2018年12月25日

奇跡の748SP <再会編>

以前、こちらのコラムで紹介した「奇跡の748SP」、コラム読者の皆さんの中には覚えていらっしゃる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

初耳とおっしゃる方にはぜひこちらのコラムを読んでいただければと思います。

そのDucati 748SPで、また小さな奇跡が起こったお話です。

それは、2018年の9月のことでした。岡山のテストから戻るとワークショップに1通のFAXが届いていました。

それは、レイクラフトのコラムをご覧になって連絡されてきた、あの748SPの新しいオーナー様からでした。

ふと、懐かしさと驚きと嬉しさがが入り混じった不思議な心境になりました。またあの748SPに再会できるなんて! 

さかのぼること7年前、仙台のフクダテクニカさんでECUのカスタムを終えた直後に震災に遭い、それでも奇跡的に難を逃れた748SP、沖縄で過ごしていたと思っていたその車両が今度は横浜に戻ってきていたなんて。不思議です。これは小さな奇跡です。

今回、新オーナー様からご連絡を頂いたのは、当時装着したFALCONダッシュが破損してしまったため、交換できないかとのお問い合わせでした。

ん~、残念ながらFALCONダッシュは生産終了となりもう手に入れることはできません。

何か良いダッシュメーターはないだろうか?いつも悩むところです。

メーターは換装がとても難しい電装部品の一つです。

電装系がもっとシンプルだったかつてのバイクなら、タコ信号と車速信号、水温センサーなどをつないでアナログの汎用メーターをつけるとか出来たかもしれませんが、電気マシーンと化している最近のバイクでは、ノーマルのECUからの信号を簡単には拾えなくなっていたり、IDの公開されていないCAN信号でつながっていたり、はたまた、メーターが制御の一部を担っていたりと、簡単には手出しできない状況になっています。

さらに、公道でも使用するとなると、ウインカーや燃料警告灯、ヘッドライトの作動、それらとつながるスイッチもちゃんと動かせなくてはなりません。

おまけに、この748SPはECUをMicrotec(マイクロテック)製のM180に換装しています。

ハードルはかなり高いです。

そこで、今回白羽の矢が立ったのが、スターレーン社製のDavinci-II S(ダヴィンチ-II S)です。

このダッシュを取り付けるお話は次のコラムでご紹介します。

どうぞ、お楽しみに~!

ネコラム2017年3月14日

DBW化プロジェクト第2弾 Ducati749R 火入れ!

どうでしょう!このスムーズでリニア感のあるバタフライの動き!

シフトペダルの動きと絶妙にリンクするブリッピング!

そもそもなぜDBW(ドライブ・バイ・ワイヤ)にするのか?

その答えはここにあるのです。

 

どうしてわざわざお金も時間も掛けてそんな面倒な電装系を組み込むのか?と疑問を持たれる方もいらっしゃるかと思いますので、ここで簡単にDBWの仕組みとDBW化のメリットをご説明をさせて頂きます...と思いましたが、以前そのあたりの詳しくわかりやすい説明を別のコラムで解説しておりますので、知りたい方はぜひこちら↓のコラムをご覧ください。

Ducati MH900e DBWプロジェクト! 始動 <前振り>

今回の749RのDBWプロジェクトでは、スロットルボディはオリジナルを使用し、2つのボディの結合プレートの部分にDBWのモーターが内蔵されたユニットを組み込みました。

このユニットの中央部分に遊星ギアを用いたリダクションギアを介したモーターの軸があり、この軸につながったリンクプレートとロッドで双方のスロットルバルブを連動させる仕組みです。

それがこちらの画像です。

IMG00732

 

DBW_1

冒頭の動画では伝わりづらいですが実際にはこのDBWのスロットルバルブの動きは驚くほどスムーズで繊細。

かつて、バレンティーノ・ロッシがYAMAHAのM1に初めて試乗したときの最初のコメントが、”Sweet!”だったらしいですが、このDBWもまさに”Sweet!”そのものです。

最近は輸入・国産問わずDBWの量産車が増えてきましたが、量産車に搭載されているDBW制御のスロットルバルブの動きとは違う繊細さがあります。この違いは一般的な量産型DBWギアボックス+大慣性モーターと遊星ギア式ギアボックス+小慣性モーターの違いではないでしょうか?

このスムースなスロットルの動きはライダーの要求に対応できるエンジンブレーキコントロールの実現を予感させます。

Ducatiのカスタムの匠!フクダテクニカさんといろいろ打合せしながら作業を進めてゆきます。

DBW_2

車体にスロットルボディがきれいに収まりました。

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ECUはマイクロテックのM232R, DBWのドライバーは同じくマイクロテックのM282。この2つのモジュールはCANで通信しています。

今回は亀の親子の様に二段重ねに。M232RのほうはFW(ファームウェア)およびSW(ソフトウエア)のプログラマーの名前にちなんで、Luca(ルカ)と呼び、M282は最近生まれたLucaの息子の名前にちなんでPietro(ピエトロ)と勝手に呼んでいます。

IMG00753

DBWの初期設定をインプットしていざ火入れ!

エンジン掛かりました~(^_-)-☆

でも、まだまだ細部のセッティングを詰めていかなければなりませんが、今回はここまで。

次回<完結編>(だといいのですが…)をお楽しみに。