今回はM232Raycraftのソフトウエアに関して紹介します。
まずM232Raycraftのソフトウエアはエンジンブレーキコントロールに特徴があります。その特徴とはサーキット走行時の減速時に発生しやすいリアタイヤのハーフロック(スキッド)レベルを自動的に感知してバイパスエアバルブの開度やスロットルバルブの開度を自動的に増やしエンジンブレーキの強さを適正化する機能を備えている点です。
ところで全日本レベルのライダーがコーナー進入時にどのぐらいリアタイヤがスキッドしているかご存知ですか?その値はタイヤや路面や車両のセットアップの状況および乗り方にもよりますが前後車輪の車速差が最大で30~40Km/hにも達するケースもあります。
このグラフは鈴鹿のシケイン進入時のグラフですが、赤が前輪車速で黄が後輪車速です。また緑がエンジン回転数で白がスキッドゼロ時の仮想エンジン回転数です。この時の赤と黄の最大差は約25Km/hでありその付近ではエンジンブレーキが強すぎて減速のトラクションが極端にない状況になっていることを示しています。
こんな状況を多くのライダーは「エンブレが効かないから止まれない」と理解している場合が多く、さらにアイドル回転数を下げて進入時にテールスライドを誘発している人たちも全日本レベルのライダーでも大勢いるのです。しかしながらこの原因は車両側の問題も大きいのです。
この車両側の問題とはレースベース車とはいえ現状は効果的なエンジンブレーキコントロールデバイスを装備していたとしてもKIT-ECUがエンジンブレーキコントロールの機能を持たなかったり、KIT-ECUがエンジンブレーキコントロールを行っているとしてもセッティングが効果的でなかったり一般ユーザーが設定を変更出来ない場合が多いからです。
ここで話をもとに戻しグラフを見てみるとスキッドが多い場合はエンジン回転数も当然のことながら低下します。エンジンブレーキを緩和するためのバイパスエア量はどの様なデバイスタイプであっても、ギアによってバイパスエアの量が変わったり、バイパスエア量の特性が非直線であったり、低回転域で一定になったりしますがエンジン回転数が高ければ多く低ければ少ないと言った定性的な関係は変わりません。
この定性的なルールから言えばスキッド発生によって低下したエンジン回転数は単にエンジン回転数低下ではなく、予定されているバイパスエア量を減少させ、さらにスキッドを誘発させその誘発レベルは初期のスキッドが多ければ多いほど高くなります。いわゆるデススパイラルスキッドです。
そこでスキッド発生時のエンジン回転数低下とバイパスエア量の低下の関係をキャンセルしたのがM232Raycraftのスキッド感応型のエンジンブレーキコントロールです。このシステムはエンジンブレーキコントロールのバイパスエア量決定の関数をエンジン回転数からスキッドゼロの場合の仮想エンジン回転数に変更したものです。このシステムにより減速時のスキッドレベルは低減しスキッドレベル変化率も低下します。
具体的なメリットとしては「今までより短時間で安全に減速が完了する」ためのセッティングの自由度が大幅に広がる点です。今回はターンイン前までのエンジンブレーキに関するメリットを紹介しましたが次回はこのシステムのターンイン中のメリットを紹介します。