前回のコラム 2015鈴鹿8耐レビューその1では2014年のTeamKGAYAMAの戦いを振り返りました。
今回はいよいよ2015年8耐のレビューです。
2015年の8耐はチームにとっては3回目、レイクラフトにとってもTeamKAGAYAMAでの2回目の8耐となり、ある程度勝手がわかってきている反面、様々な解決すべき点も見えてきて別の意味での難しさもありますし、2年連続3位表彰台を獲得している以上、チームや関係者、スポンサー、応援してくださる皆様の期待が否が応にも高まってきているのを感じずにはいられません。
そして、そんな周囲の期待をさらに高める”事件”ともいうべき動きが7月初めに起こりました。それは注目の第3ライダーの発表です。
その人は何と、「清成龍一」選手でした。
今シーズンはBSBにBMWで参戦していますが、鈴鹿の8耐では過去にホンダでなんと4度の優勝を飾っており、TeamKAGAYAMAでは3年目となる芳賀紀行選手と組んで、メーカーの枠を超えたオールジャパンのドリームチームが結成されることになりました。
私たちレイクラフトも清成選手と仕事をさせて頂くのは今回が初めてなので期待もある反面、これだけのメンバーがそろったチームで、なおかつ過去2回の3位表彰台という実績を踏まえ、今年は7回ピット必達で優勝を目指すというチームの目標を前に、身の引き締まる思いで臨むことになりました。
清成選手が唯一参加できた7月上旬の事前テストでは、はじめて乗るスズキのバイクに慣れてもらいたいという加賀山選手の配慮から、清成選手はほかの二人よりも積極的に周回数をこなし、ドライとなったテスト2日目にはチームベストの2分8秒5のタイムを出してその実力を見せつけてくれました。
その翌週のテストでも、チームは予定されたテスト項目を着実に消化し、このまま順調に進むかと思われました。
しかし、やはり燃費の問題が立ちはだかります。
燃料消費量を削るポイントは、だいぶ前のコラムでもご紹介しましたが、全開や過渡だけではなく、(もちろんそのあたりも重要ですが)キーとなるのは実は減速区間です。
減速区間は、ライダーはアクセルは閉じていますが、スロットルバルブは微開しています。これはエンジンブレーキの効きを調整するためです。
耐久の燃料セットではこの部分もカットせざるを得ません。
ただ、減速区間の燃料カットは招かれざる影響も多分に招いてしまいます。
それはカット区間のエンジンブレーキの効きが必要以上に強くなってしまうこと。 さらに、カットからの復帰の部分もスムーズさが失われやすくドンつき的なフィーリングが出てしまうこともあります。
話は少しそれますが、速いライダーはどこが速いと思いますか?
加速時のアクセルの開けが速くてスピードを上手に乗せられる?それはある意味正解ですが、その加速は実はその前のコーナリング、さらにはその前の減速区間をいかにスムーズに速く減速できるかにかかっています。
ですから、エンジンブレーキのフィーリングは非常に重要です。
エンジンブレーキの効きをマイルドにするには燃料を足せば改善しますが、そうすれば走りやすくはなりますが燃料が削れなくなります。パラドックスです。
さらに、エンジンブレーキの効きに対する要求や好みはライダーによってもだいぶ異なります。
3人のライダーの要求を満たすセットを見つけるのは非常に難しい作業です。3人の平均的なところに合わせたからといってみんながそれなりに走れるとは限りません。誰かに我慢してもらわなくてはならなくなることもあります。
このあたりが耐久レースの難しさでもあります。
全開区間や過渡の部分もいい加減燃料は絞っているので開けても加速しない、おまけに減速区間はカットが入ってエンブレのフィーリングがキツイ、こんなつらい状況なのに文句も言わずに(少しは言ってたかも・・・)セッティングを出すために走行を続けるライダーには本当に頭が下がります。
すべては結果のため。